売掛金の時効と貸倒損失を防ぐためのポイント

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売掛金の時効と貸倒損失を防ぐポイント

中小企業の財務担当者にとって、売掛金の管理は事業の健全性を保つ上で極めて重要です。
売掛金が未回収のまま時効を迎えると、貸倒損失が発生し、企業の財務状況に深刻な影響を与える可能性があります。
本記事では、2020年の民法改正を踏まえ、売掛金の時効と貸倒損失を防ぐための具体的なポイントを解説します。

売掛金の時効とは

売掛金の時効とは、債権者が債務者に対して売掛金の支払いを請求できる法的な期間を指します。

2020年(令和2年)の民法改正により、売掛金の時効期間は従来の2年から5年に延長されました。
この変更により、企業はより長期間にわたって売掛金の回収を行うことが可能となり、売掛金の管理における柔軟性が増しました。

改正民法では、売掛金を含むすべての金銭債権に対して一律5年の時効期間が適用されるため、特定の取引や職業による短期消滅時効は廃止されています。

貸倒損失のリスクと影響

貸倒損失とは、売掛金が時効を迎えるか、回収不能となった場合に発生する損失です。

この損失は、企業の利益を直接減少させ、財務状況に重大な影響を与える可能性があります。
特に中小企業においては、貸倒損失が資金繰りや事業継続に大きな悪影響を及ぼすリスクが高いため、売掛金の管理は慎重に行う必要があります。

貸倒損失の処理

貸倒損失が発生した場合、その処理は税務上および会計上の重要な課題となります。

貸倒損失は、法人税の計算上、一定の条件を満たすことで損金算入が認められます。
この処理により、企業は発生した損失を計上し、納税額を減少させることが可能です。

貸倒損失の分類

  • 法律的に債務が消滅した場合
    裁判によって確定した債権や、債務者の破産による免責確定など、法律的に債務が消滅した場合に、原則として貸倒損失として処理することができます。
  • 経済的な回収不能と判断される場合
    債権が経済的に回収不能と判断される場合、例えば、債務者が事業を廃業し、資産もほとんど残っていない場合などには、貸倒損失として処理することが可能です。
    ただし、具体的な証拠や資料が必要です。
  • 一定期間にわたって弁済がされなかった場合
    債務者が長期間にわたって弁済を行わず、かつ債務者の支払能力がないと認められる場合、例えば1年以上にわたって弁済がない場合などには、貸倒損失として処理することが認められることがあります。

貸倒損失の処理は、適切に行うことで税務上のメリットを享受することができますが、不適切な処理や証拠不足により損金算入が認められない場合もあるため、慎重な対応が求められます。

税務上の貸倒損失として認められるためには、適切な証拠の収集と、法的・経済的な観点からの判断が重要です。

貸倒損失の消費税

売掛金その他の債権が貸倒れとなった場合、その貸倒金額に対応する消費税額は、貸倒れが発生した課税期間の売上に対する消費税額から控除されます。
具体的な手続きは以下のようになります

  • 貸倒れの事実確認
    貸倒れが確定したことを、債務者との契約書や法律上の手続きなどを通じて確認します。
  • 消費税額の再計算
    該当する売掛金に対応する消費税を計算し、還付や控除を求めます。
  • 税務署への申告
    必要な書類を添付して、貸倒れによる消費税の調整を申告します。

参考 国税庁ホームページ(貸倒れに係る税額の調整

時効管理と貸倒損失の防止策

売掛金の時効を管理するためには、定期的に売掛金の確認と早期回収を行うことが不可欠です。
例えば、未回収の売掛金については定期的に督促を行い、支払いが滞っている場合は速やかに対応策を講じることが重要です。

また、取引先の信用調査を行い、リスクの高い取引を避けることで、貸倒損失のリスクを低減することができます。
時効が近づいた場合には、法的手段の検討も含めて迅速に対応することが求められます。

時効延長の方法とその効果

時効期間を延長するための手段として、債務者との合意による時効延長契約や、時効を中断させる法的手続きを取ることが可能です。
売掛金の時効延長を行うためには、以下の方法があります。

  • 債務承認を得る
    債務者から売掛金の存在を認める文書や言動を得ることで、時効期間がリセットされます。
    例えば、債務者が口頭や書面で支払いの意思を示したり、部分的にでも支払いを行ったりすると、その時点から新たに時効がスタートします。
  • 支払い猶予の合意
    債務者と合意の上で、支払期限を延長することが可能です。
    この場合、新たな合意書を作成し、署名・捺印を受けることで時効の延長ができます。
  • 訴訟の提起
    債務者が支払いに応じない場合、裁判所に訴訟を提起することで時効を延長することができます。訴訟を提起することで、時効は中断され、裁判が終結するまで時効の進行は停止します。
  • 支払い督促の申立て
    裁判所に対して支払い督促の申立てを行うことで、時効を中断させることが可能です。
    支払い督促が発令されると、時効の進行が停止し、その後の対応次第でさらに時効期間が延長されます。
  • 仮差押え・差押えの実施
    債権の保全措置として、債務者の財産に対して仮差押えや差押えを行うことも時効の中断に有効です。
    これらの手続きは、時効期間を止める効果があり、債権の回収を確実にするための強力な手段となります。

これにより、売掛金の回収可能期間を延長し、貸倒損失のリスクをさらに低減することができます。
しかし、これらの手続きには法的知識が必要となるため、専門家の助言を受けることがお勧めです。

まとめ

売掛金の時効と貸倒損失は、中小企業にとって重大なリスク要因です。
2020年の民法改正により、売掛金の時効期間は5年に統一され、より長期間にわたって債権回収が可能となりました。
しかし、時効管理を怠ると、貸倒損失が発生し、企業の財務に深刻な影響を及ぼすリスクが高まります。

財務担当者は、定期的な債権確認と迅速な対応を心がけることで、企業の経営を健全に保つことが重要です。

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